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なぜ紹介の質は安定しないのか?中途採用でエージェントを最大限活用するための考え方

大山夏季

大山 夏季

中途採用支援事業部 事業部長 / シニアコンサルタント

目次

採用活動において、エージェントサービスを活用し、量と質の両面でより良い候補者の獲得を目指す企業は、数年前と比べて年々増えています。
その背景には、社内リソースだけで必要な数の候補者を安定的に確保することが難しくなっていることに加え、採用市場そのものが大きく変化している状況があります。

中途採用市場では、即戦力人材を中心に人材の流動性が高まる一方、企業間の獲得競争は激化しています。求職者の価値観やキャリア志向は多様化し、企業側も「選ぶ立場」から「選ばれる立場」へと移行する中で、採用活動の進め方そのものが見直されつつあります。

こうした状況の中で、候補者との接点を広げ、マッチ度の高い採用を実現する手段として、エージェントサービスの活用は重要な選択肢のひとつとなっています。しかし、それと同時に「紹介数は増えたものの、求める人材と合わない」「選考が思うように進まず、結果的に工数やコストだけが増えている」といった課題を感じている企業も少なくありません。

そこで今回の記事では、エージェント経由の採用において質にばらつきが生じる理由を整理したうえで、一定水準以上の質を保ちながら成果につなげるための考え方と具体的なポイントを解説します。

エージェント紹介の質にばらつきが生じる理由と構造的要因

エージェントからの紹介において質にばらつきが生じてしまう原因は、大きく分けて2つあります。

構造上の問題

1つ目は、コミュニケーション構造の問題です。エージェント経由の採用では、情報が複数の立場を経由して伝わるため、やり取りが「伝言ゲーム」のような状態になりやすい構造を持っています。

【例】
企業 ↔ RA ↔ CA ↔ 候補者
このように、情報が複数の担当者を経由することで、企業の意図や背景、ニュアンスが少しずつ変化して伝わってしまう可能性があります。特に、コミュニケーションラインが3つ以上存在する構造では、情報の抜け漏れや解釈のズレが生じやすくなります。

伝言ゲームが発生すると、重要な情報が途中で省略されたり、意図とは異なる形で伝わってしまうことがあります。しかし、そのズレを確認する機会がないまま採用活動が進んでしまうため、結果として「紹介される候補者の質が安定しない」という状態につながります。

特に、ジョブ・ディスクリプションとして最低限の要件は共有されているものの、それ以上の情報、たとえば職場の雰囲気や価値観、暗黙の前提となっている期待役割、仕事の進め方といった部分までは十分に伝わっていないケースが多く見られます。そうすると、スキルや経験の条件は満たしているものの、カルチャーやスタンスが合わない候補者が推薦されやすくなります。

さらに、「どの条件を優先すべきか」という判断軸が明確に共有されていないことも、質のばらつきを助長する要因です。必須要件が多いこと自体が難易度を高めている場合もありますが、それ以上に問題となるのは、条件の優先順位が不透明なままエージェントに委ねられている状態です。この状態では、エージェントは何を重視すべきか判断できず、要件を形式的に満たしているだけの候補者の推薦に偏ってしまいます。

加えて、たとえRAと良好な関係を築いていたとしても、担当者の退職や人事異動によってその関係性や認識がリセットされてしまうケースも少なくありません。個人との関係性に依存した状態では、継続的に質の高い紹介を受け続けることが難しくなってしまいます。

フィードバックの問題

2つ目は、選考結果に対するフィードバック不足です。
お見送りとなった際に、その理由を具体的に共有せず、「なんとなく違う」「今回は見送りで」といった曖昧な表現に留めてしまうと、エージェント側は何を修正すべきかを判断できません。

フィードバックが蓄積されないままでは、人物要件や条件の解像度が高まらず、同じような候補者の紹介が繰り返されることになります。その結果、紹介の質が改善されないまま、ばらつきが生じ続けるという悪循環に陥ってしまいます。

質が安定しない採用のリスク

紹介の質にばらつきが生じると、採用活動全体にさまざまな悪影響を及ぼします。主な影響は、次の4つです。

1. 機会損失の発生
採用要件やターゲット像が十分にブラッシュアップされていない状態では、間口が広がりすぎてしまい、「本当に採用したいトップターゲット」の紹介が後回しになることがあります。
その間に、優秀な候補者が他社へ流れてしまうなど、気づかないうちに大きな機会損失が発生しているケースも少なくありません。

2.人事の工数増加
たとえミスマッチな候補者であったとしても、企業側は紹介されたすべての人材に対して書類選考を行う必要があります。
そのため、紹介の質にばらつきがある状態では、書類選考や一次判断にかかる工数が必要以上に増大し、人事担当者の負担が大きくなってしまいます。

3.エージェントのモチベーション低下
エージェント側も、紹介する以上は成約につなげたいと考えています。しかし、紹介しても毎回お見送りが続く状態になると、「この企業にはどのような人材を推薦すべきか」が見えなくなり、モチベーションの低下を招きかねません。さらに、優先度が下がり、他社への紹介を優先されてしまう可能性も出てきます。

4.内定承諾率の低下
エージェントとのコミュニケーションが十分に取れていない場合、内定承諾のフェーズでも影響が出ます。
候補者が複数社から内定を得ている状況で、最終的な判断をCAに相談した際、CAが日頃から密にコミュニケーションを取っている企業や、情報提供が手厚い企業を勧めるケースは少なくありません。
この場合、企業側がどれだけ直接候補者をフォローしたとしても、CAの言葉が意思決定に大きく影響し、結果として内定承諾率の低下につながる可能性があります。

安定した品質を実現するためのエージェントとの関係設計

紹介の質のばらつきを無くし、一定レベル以上の質を保つためには、エージェントとの継続的かつ密なコミュニケーションが欠かせません。

企業側が日常的にやり取りを行うのはRAである一方、実際に求職者との関係性を築いているのはCAです。だからこそ、RA・CAそれぞれの役割を踏まえたうえで、自社の魅力や特徴、そして「どのような人材を本当に求めているのか」を正しく理解してもらう必要があります。

これを実現するための具体的な方法として、以下の取り組みが有効です。

1.フィードバック体制の構築

フィードバックが十分に蓄積されないままでは、エージェント側でターゲットの修正や紹介精度の改善を行うことができません。
そのため、お見送りとする場合には、単に「今回はお見送りです」と伝えるのではなく、

・年収水準に対して求める経験値がやや不足している
・一定の要件は満たしているが、この点は懸念になる

といったように、満たしている条件と満たしていない条件のバランス、そして判断に至った背景を言語化して共有することが重要です。
このニュアンスを含めたフィードバックによって、エージェントは次にどのような人材を紹介すべきかを具体的に理解できます。

また、各選考フェーズにおいて、「なぜ合格なのか・なぜ不合格なのか」を丁寧に伝えることも欠かせません。加えて、「ここは非常に魅力的だった」「一方で、この点は懸念として残った」といった面接所感を共有することで、企業とエージェントの目線は徐々に揃っていきます。

こうしたフィードバックを積み重ねることで、紹介の精度は着実に高まり、質のばらつきを抑えた採用活動につながっていきます。

2. RA向け勉強会の実施

質の高い紹介を実現するうえで重要なのは、RAがCAに伝えられる情報量と解像度を高めることです。そのため、RA向けに勉強会を実施し、自社の考え方やカルチャー、採用背景を深く理解してもらうことが効果的です。

単なる求人説明にとどまらず、自社の広報的な役割をRAに担ってもらうイメージで設計すると、CAへの情報伝達の質も高まります。
また、可能であればオンラインではなく来社形式で実施し、オフィスの雰囲気や働くメンバーの空気感を体感してもらうことで、言葉だけでは伝えきれない要素まで共有することができます。

加えて、「あなただから来てほしい」「自社にとって重要なパートナーである」というスタンスを明確に示すことで、RAのモチベーション向上にもつながります。

3. CA向け勉強会の実施

ベースとなる要件や認識がある程度そろった段階では、CA向けの勉強会も有効です。
勉強会は録画を行い、リアルタイムで参加できないCAにも共有することで、より広い範囲に自社の考え方を届けることができます。

近年では、AIが求職者のレジュメを読み取り、要件を満たす求人を自動的に抽出する仕組みを導入しているエージェントも増えており、形式的な条件面でのばらつきは以前より小さくなっています。一方で、「一部条件は満たしていないが、その他は非常に優れている人材」など、人の判断が求められる領域は、AIでは補いきれません。

この判断軸をCAに正しく理解してもらうことで、紹介の質をさらに高めることができます。その際、抽象的な説明だけではニュアンスが伝わりにくいため、個人が特定されないレジュメを用いながら、「このケースは紹介対象かどうか」を一緒に考えていく形式が効果的です。

このように実例を交えたディスカッションを行うことで、企業が重視している判断ポイントを具体的に共有することができます。

自社にとって最適なエージェント活用戦略とは

エージェントを効果的に活用するためには、紹介の「量」と「質」の両方が安定していることが重要です。両立できていれば、無駄な工数を抑えながら、自社が本当に求める人材を最適な形で採用することができます。

一方で近年は、「一定の質のばらつきは許容し、とにかく量を確保したい」と考える企業も増えています。量を集めなければ始まらないという前提のもと、求人プラットフォームへの掲載などを活用し、まずは幅広く母集団を形成する戦略を選択するケースも少なくありません。

エージェントと密なコミュニケーションを重ね、関係性を構築するには、どうしても時間や工数がかかります。そのため、質を高めることにリソースを割くよりも、一定数の紹介を受け、その中から自社で選別する方が合理的だと判断する企業にとっては、こうしたやり方も一つの有効な選択肢と言えるでしょう。

このように、「エージェント活用においては質を担保すべき」「質の担保こそが正解」と一概には言えなくなってきた背景には、過去に質が安定しなかった経験を通じて、「目線合わせに注力するより、多くの人材と会う方が結果的に採用目標を達成できるのではないか」という考えが広がってきたことがあります。

エージェントから一定の質を保った紹介を受けたいのか、それとも量を重視するのか。どちらを選ぶかは、企業の採用戦略やフェーズによって異なります。だからこそ、まずは「自社は今、どちらを求めているのか」を明確にすることが重要です。

そのうえで、質を重視した採用を目指すのであれば、エージェントとの日常的なコミュニケーションを見直し、フィードバックの出し方や関係性の築き方にあらためて向き合うことをおすすめします。それが結果として、紹介品質の安定と、持続的な採用成果につながっていくはずです。

この記事を書いたメンバー

大山夏季

NATSUKI OYAMA

大山 夏季

中途採用支援事業部 事業部長 / シニアコンサルタント

大手航空会社のグランドスタッフを経験したのち、ヤフー株式会社に入社。中途採用・新卒採用・子会社設立・HRBP立ち上げなど、人事領域全般に従事。 その後、株式会社カプコンにて、中途・新卒・グローバル採用などの採用業務を中心とした人材開発業務や人材配置を担当。 2024年にSTARMINEへ参画。
中途採用支援事業部の事業部長を務め、中途採用コンサルティング業務に従事。

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