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中途採用には、戦略設計から入社までいくつものフェーズがあり、各フェーズで「歩留まり」が発生します。
しかし、「採用プロセス上、ある程度の歩留まりは仕方ない」と考え、課題の本質を見過ごしてしまってはいないでしょうか。
実際には、歩留まりの背景には「採用基準のブレ」や「面接の属人化」など、プロセスの根本に関わる問題が潜んでいるケースが多く見られます。
この記事では、中途採用の各フェーズにおける歩留まりの課題の見つけ方と、よくある課題への改善策について解説します。

そもそも歩留まりとは、採用プロセスの各フェーズで候補者がどれだけ次のステップに進んでいるかを示す指標のことです。
たとえば「応募数に対して書類選考を通過した人数」や「一次面接に進んだ人数に対して二次選考に進んだ人数」など、各フェーズの通過率を可視化することで把握できます。
こうした歩留まりの課題を見つけるためには、どのフェーズでも現実にしっかりと目を向け、正しいデータを収集することが欠かせません。データが正確でなければ、課題の本質を見誤り、的外れな改善策に終わってしまうリスクがあります。
そのため、感覚や印象に頼らず、事実ベースで現状を把握することこそが、歩留まりの原因を正しく捉え、採用プロセスを改善していくための第一歩だと言えます。
ここからは、採用プロセスの各フェーズごとに、課題の見つけ方と改善策を順に解説していきます。

【課題の見つけ方】
母集団形成の課題を見つけるには、まず応募経路ごとのデータを正確に把握することが重要です。
・どの媒体やエージェントからの応募がどれだけあるのか
・応募状況の比率
を明確にし、各応募経路の効果を分析しましょう。また、募集要件とペルソナが一致しているかも確認する必要があります。
ただし、応募数だけでは効果の善し悪しは判断できません。効果を正しく評価するには、自社の数値を市場平均や状況と比較することが必要です。
・ダイレクトリクルーティングの場合:スカウト送付数・開封率・返信率
・エージェント利用の場合:紹介数
これらの指標を算出して比較することで、自社の現状を客観的に把握できます。
判断が難しい場合は、媒体元の担当者に相談すれば、市場感に沿った判断をしてもらうこともできるため、適当な判断をすることは避けましょう。
【よくある課題例】
①ターゲットのミスマッチ
 ・ペルソナと実際の応募者が一致しない
 ・現場との目線合わせ不足により、採用要件の認識にズレがある
②求人票の内容がターゲットに刺さっていない
 ・求人票の表現や訴求ポイントが不十分で応募者の関心を引けない
③採用デッドラインまでに必要な母集団を形成できない
 ・現状の応募数・質では目標達成が難しい
【改善策】
①媒体の最適化
媒体の最適化とは、単に媒体を選び直すだけでなく、求人票やスカウト文面の改善も含まれます。たとえば、求人票の表現をターゲットに刺さる内容にリライトしたり、スカウト文面を応募者の関心に合わせて調整することで、媒体運用全体の効果を高めることができます。こうした文面改善を媒体の見直しと合わせて行うことで、母集団の量と質を同時に高めることが可能です。
②エージェントの最適化
エージェント活用の最適化では、RAだけでなく、実際に求職者に自社の魅力を伝えるCAにも情報を共有することが重要です。自社の強みや特性、求めるペルソナ像、現状の市場状況をCAに伝えることで、紹介される候補者の質を高めることができます。
もしそれでも改善が見られない場合は、エージェント企業の再選定を検討しましょう。企業によって得意領域や対象求職者層は異なるため、複数のエージェントに並行してアプローチしながら、状況に応じて最適なパートナーを選ぶことが効果的です。

【課題の見つけ方】
書類選考フェーズの課題は、誰が書類を見て合格と判断したのかを軸に考えると整理しやすくなります。
具体的には、担当者ごとの書類選考通過率を算出することで、「選考基準が属人化していないか」を確認できます。また、書類選考を通過した候補者が一次面接で落ちるケースが多い場合は、書類選考段階での評価基準に課題がある可能性が高いことも見えてきます。
【よくある課題例】
①選考基準の属人化
 ・担当者によって通過率や評価が大きく異なる
 ・判断基準が統一されておらず、選考のブレが発生している
②スキル評価の見落とし
 ・書類選考では基準を満たしていたが、面接でスキル不足が判明
 ・書類段階でチューニングできる部分が残されている
③ポテンシャルの見落とし
 ・伸びしろがある候補者を見逃している
④エージェントからの推薦の質が安定しない
 ・候補者の質にバラつきがある
【改善策】
①選考基準の統一と見直し
書類選考の通過率を安定させるためには、まず基準の統一が不可欠です。
担当者による属人的な判断が目立つ場合は、評価項目や合格ラインを明確にし、担当者間で共通認識を持つことが重要です。また、一次面接でスキル不足が判明するケースが多い場合は、書類選考基準を振り返り、面接で課題となるポイントを事前に評価できるようにチューニングしましょう。
②伸びしろに期待した選考
現時点ではスキル面が要件を満たしていないものの、成長ポテンシャルが感じられる候補者は、書類選考で通過させることも一つの手法です。もちろん、その後の面接で不合格になる可能性はありますが、採用後に成果が出た事例をナレッジとして蓄積しておくことで、ポテンシャル重視の書類選考を効果的に活用できるようになります。
③エージェントのコントロール
エージェントの中には、量で勝負してくる会社も存在します。
大量の推薦があっても、質の高い候補者を選定して適切にコントロールすることができれば、通過率向上につながります。

【課題の見つけ方】
一次面接フェーズでも、まずは担当者ごとの通過率を確認することが重要です。書類選考と同様に、面接官によって通過率に大きな差がある場合は、選考基準が属人的になっている可能性があります。
さらに、一次面接では面接後の辞退率も重要な指標になります。面接を通過した候補者が辞退するケースが多い場合は、面接の内容や伝え方に改善の余地があることが考えられます。候補者が辞退する理由を分析し、どの部分に課題があるのかを把握することが第一歩です。
【よくある課題例】
①選考基準の属人化
 ・面接官によって合格・不合格の判断に差があり、選考のブレが発生している
②面接内容や訴求の質のばらつき
 ・面接官によって伝える情報や訴求ポイントが異なる
 ・候補者に自社の魅力が十分に伝わらず、辞退につながる
③面接官のスキル不足
 ・どの質問をすればよいか、どの情報を引き出すべきかが面接官によって異なる
【改善策】
①選考基準の統一
一次面接でも、通過率の差が大きく属人化が見られる場合は、選考基準の統一が不可欠です。面接官ごとの判断基準を明確にし、候補者を評価する際の基準を共通化することで、選考のブレを減らし、面接通過率を安定させることができます。
②面接官のトレーニング
面接で何を伝えるべきか、どのように候補者に訴求するかは、あらかじめ設計して整理しておくことが重要です。候補者のタイプごとにどの情報を伝えるべきかのパターンを作成し、すべての面接官に共有しておくと、面接の質を均一化できます。
また、「どの質問をすればよいか分からない」といった面接官がいる場合は、引き出すべき内容・その理由・具体的な引き出し方を丁寧に紐解き、インプットさせることが効果的です。

【課題の見つけ方】
二次面接・最終面接でも、辞退率や内定承諾率を指標として可視化することが重要です。このフェーズでは、一次面接よりも候補者の辞退が増えたり、カルチャーマッチ度の低さが露呈したりといった課題が発生しやすくなります。データをもとに、どの段階で問題が生じているかを正しく把握することが大切です。
【よくある課題例】
①辞退率の増加
 ・最終面接前後で辞退が増え、採用計画に影響が出る
②カルチャーマッチ度の低さ
 ・企業文化やチームとの相性が合わず、内定につながりにくい
③候補者体験の不十分さ
 ・面接の雰囲気や面接官の対応にばらつきがあり、候補者の印象が悪くなる
【改善策】
①一次選考とは異なる軸での質問設計
二次面接・最終面接では、一次面接とは異なる観点で候補者を評価する必要があります。一次面接での質問設計や面接官トレーニングを行っていても、二次面接ではより粒度を高めた質問設計を行うことで、候補者の適性やカルチャーマッチをより正確に見極めることができます。このように、質問の役割や軸を明確化することが、選考の精度向上につながります。
②候補者体験を高める
このフェーズでは、面接官の話すトーンや面接の雰囲気など、細部まで配慮した体験設計が特に重要です。そのため、面接官トレーニングだけでなく、関わるリクルーター全員で情報を共有し連携を図ることも不可欠です。さらに、最終面接前に候補者本人への意向確認や面接対策を人事が率先して行うことで、候補者体験を向上させ、内定承諾率の改善につなげることができます。

【課題の見つけ方】
内定~承諾フェーズでは、まず内定承諾率を指標として確認することが重要です。
加えて、最終面接から内定まで、内定から承諾までのリードタイムも注目すべき指標となります。リードタイムが長い場合は、候補者の意思決定が滞っていたり、競合他社の影響を受けやすくなる可能性があります。
【よくある課題例】
①承諾率の低さ
 ・内定を出しても候補者が承諾しない
②リードタイムの長期化
 ・最終面接~内定、内定~承諾までの期間が長く、候補者が他社に流れる可能性がある
③クロージングの不十分さ
 ・オファーが形式的で、企業側の想いや魅力が十分に伝わっていない
【改善策】
①内定を出す最良のタイミングを考える
内定を出すタイミングは状況によって異なります。競合がいる場合は、後出しの方が効果的なケースもありますが、統計的には「最初に内定を出した企業への承諾率が高い」というデータもあります。そのため、状況や候補者の状況を見極めつつ判断することが重要です。
また、内定出しは単なる形式的な手続きではなく、企業側の想いや誠意を伝える時間として捉えることで、クロージングをよりスムーズに進めることができます。
②オファー面談の体験設計
承諾の判断には、提示する条件だけでなく面談体験も大きく影響します。最終面接前に候補者の意向や他社状況を把握できる場合は、できる限り情報を集め、その情報をもとにオファー面談を設計しましょう。候補者が納得しやすい伝え方や条件提示を行うことが、承諾率の向上につながります。
③本音を引き出す
このフェーズでは、候補者の本音を引き出すことが非常に重要です。「本音で話してください」と伝えるだけでは、全員が素直に本音を話すとは限りません。そのため、相手が安心して話せる環境を作り、聞き出すテクニックを活用することが求められます。そうした工夫によって候補者の本音を理解できれば、条件提示やクロージングの精度をより高めることができます。

【課題の見つけ方】
承諾後~入社フェーズでは、まず入社率を指標として確認することが重要です。承諾した候補者の中にも辞退するケースは一定数存在するため、入社までの状況を正確に把握しましょう。
さらに、試用期間を設けている場合は、試用期間中の早期離職率も重要な指標となります。入社後に離職するケースが多い場合、採用時の期待値の伝え方や入社後フォローに課題がある可能性があります。
また、入社後の率直な感想をヒアリングする入社後面談やアンケートを実施することも有効です。実際に働く中での気付きや不安を可視化することで、新たな課題を見出すことができます。
【よくある課題例】
①入社辞退の発生
 ・承諾後、何らかの理由で入社に至らないケースがある
②早期離職の発生
 ・試用期間中や入社直後に離職が発生してしまう
③入社後ギャップの発生
 ・入社前の期待と実際の業務や環境に差があり、モチベーション低下や不満につながる
【改善策】
①メンバーとの面談実施
メンバー紹介や面談を入社前の流れに組み込むことが、入社率向上には効果的です。一緒に働くメンバーと接点を持たせることで、入社へのワクワク感を高め、会社やチームへの共感を生むことができます。
②期待値を明確に伝える
入社後に期待するポイントを事前に伝え、「どの部分で力を発揮してほしいのか」を候補者に理解してもらうことは、入社後の早期離職防止につながります。
③ウェルカムボックスの活用
ウェルカムボックスは、入社前のワクワク感を演出し、会社への親近感を醸成する効果があります。
④入社後フォローの徹底
オンボーディングやOJTなど、入社後のフォロー体制を整えることで、入社前後のギャップを減らし、早期離職を防ぐことができます。ここでは、候補者の不安や疑問に適切に対応できる体制を構築し、徹底することが重要です。

中途採用における課題と改善策は、一見すると似通っているものもありますが、課題を捉える角度や粒度はフェーズごとに異なります。そのため、各フェーズごとに課題を丁寧に見つめ直し、適切に分析することが重要です。
改めてデータを算出し、通過率や辞退率、内定承諾率などの指標を整理してみると、従来の感覚や印象だけでは気づけなかった意外な課題や改善点を発見できることがあります。まずは、課題を洗い出す姿勢とデータとしっかり向き合う姿勢を持つことが、中途採用プロセス全体の改善につながります。
RELATION
 
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