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【情報収集から始める採用戦略】効果的な情報収集方法と採用戦略設計への活かし方

大山夏季

大山 夏季

中途採用支援事業部 事業部長

目次

採用活動では、市場情報の収集や戦略立案の段階でつまずくと、その後の母集団形成や選考プロセスが円滑に進まなくなることがあります。そこで今回は、中途採用における効果的な市場情報の収集方法と、その情報をもとにした採用戦略の設計方法についてご紹介いたします。

多様化する採用手法と副業解禁がもたらす転職市場の変化

顕在層・潜在層それぞれに適した採用手法

情報収集方法はいくつかありますが、自ら積極的に転職活動を行っている顕在層に対しては、コーポレートサイトに採用情報を掲載して自己応募を待つ方法や、ハローワークや無料求人媒体に掲載する方法があります。

また、自社だけではアプローチが難しい層から人材を確保したい場合には、コストをかけて人材紹介会社やエージェントを活用することも有効です。さらに、約10年前からスカウト型媒体も主流となっており、企業が直接候補者にアプローチする『ダイレクトリクルーティング』という方法もあります。

顕在層に対する主な採用手法は、この3つに大別されます。

一方で、「自社が求める人材がなかなか見つからない」「エージェントを利用してもマッチする人材が来ない」「ダイレクトリクルーティングを試みても、ターゲット層が見当たらない」といった理由から、採用がうまく進まないという声も多く聞かれます。そのため、優秀な人材や、スペシャリストと呼ばれる特殊なスキルを持つ人材を採用したい場合は、潜在層向けの施策を検討する必要があります。

具体的な手法としては、リテーナー型の人材紹介サービス(ヘッドハンティング)や、ビジネスSNSの活用が効果的です。転職意欲が低い層であっても、自社の魅力をしっかり伝えることで興味を引き出し、採用につなげることが可能です。

この中でも特に加速しているのが「ダイレクトリクルーティング」です。
これまで主流だったのはエージェントを介した紹介でしたが、最近では企業が直接人材を獲得しに行く動きが急速に進んでいます。

特に近年では、人と人との交流を主軸にしているビジネスSNSが注目されています。ビジネスSNSは元々採用目的で作られたものではないものの、利用者のキャリアや考え方、志向性がよく見えるため、これを活用した転職潜在層へのスカウト活動が拡大しています。
従来スカウトはエージェントが行うのが主流でしたが、ここ2〜3年で企業が直接行う動きが活発化し、スカウト業務を専門とする代理店も増加してきています。

副業解禁がもたらす転職市場の変化とそのメリット

近年、多くの企業が副業を許可するようになったことで、「副業から始めて将来的に転職を考える」という方が増えてきています。以前はあまり見られなかったこの動きですが、企業側にも転職希望者側にも多くのメリットがあります。

例えば、スカウトをきっかけに転職した場合、口説かれている間は企業の良い面しか見えず、入社後に「思っていたのと違う」というミスマッチが生じることが稀にあります。しかし、副業から始めていれば、このような事態を防ぐことができます。また、副業を通じて一定の成果やパフォーマンスを確認した上で入社に至るため、給与面でも双方が納得した形で決定できるというメリットもあります。

このように、本質的な相性や仕事の進め方、組織とのフィット感を確認した上で正社員として雇用できることは、副業解禁による大きな変化であり、企業にとって大きな利点と言えます。そのため、すでに副業で関わっている優秀な人材を自社の正社員として迎えるために、積極的にアプローチする動きも増加してきています。

最新トレンド・市場動向を掴む

最新の市場動向やトレンドを把握するためには、日々HR系ニュースをチェックしたり、さまざまな媒体やイベント会社が開催するイベントやオンラインの情報交換会に参加することが重要です。

また、STARMINEのようなコンサルティング会社や、採用分野に特化した個人コンサルタントも増えてきているため、近年では「プロに頼って情報を収集する」ことも一般的な手法の一つとして定着しつつあります。

以前は、人材紹介エージェント1社と良好な関係を築けば転職市場の動向をほぼ把握できる時代もありました。しかし、近年ではチャネルが拡大し、雇用形態の選択肢も広がったことから、エージェントに頼るだけではなく、信頼できるソースを見つけ、必要な情報を的確に得ることがますます重要になっています。

選考前に押さえるべき3つの重要ポイント

採用を考える時にマーケットをベースに考えようとする方が多いですが、最も重要なのは「社内の調整」です。

<POINT①>ペルソナ設計・年収決定・求人票への反映
採用を円滑に進めるためには、社内でしっかりと認識を共有し、形骸化を防ぐことが重要です。

例えば、「年収500万円までの人材を採用したい」という方針がある場合、採用担当者は500万円以下の候補者を探すでしょう。しかし、年収を600万円程度まで柔軟に考えれば、より適した人材に出会えた可能性もあります。

このように、「魅力的だが年収が高いから見送る」という判断をしてしまうと、採用活動が長引いたり、本当に欲しい層を採用できないことがあります。そのため、ペルソナや年収、求人票を確定させた後に最も大切なのは、「どこまで柔軟に判断できるか」という基準を採用責任者と実務担当者の間でしっかりと共有することです。

<POINT②>MUST要件とWANT要件の整理
MUST要件とWANT要件を明確に定めることで、それぞれのダイレクトリクルーティング媒体にどのような人材がいるか、また、どのくらいのスカウトを送れば1件の応募が得られるかといった比較が可能になります。

<POINT③>候補者の集め方・アトラクト方法
採用基準と手順の認識が統一された後に重要となるのが、この2つです。
中途採用は不足している人材を補充する視点で進められることが多いですが、この場合には注意が必要です。

例えば、新卒採用担当者を採用する際は、「現在、新卒採用ができる人」という基準で母集団形成をすることになるでしょう。しかし、その応募者が将来も新卒採用に携わりたいと考えているかどうかは、応募段階では判断できません。

そのため、応募者がどのようなキャリアプランを描いているのかを把握し、「自社ならどのようなキャリアパスを提供できるか」「どのように成長を支援し、それが自社の成長にどのように貢献するか」といった点を、選考の中で話す場を設けることが重要です。

場当たり的にスピードを優先して進めた結果、失敗してしまうケースは少なくありません。
そうならないためには、上記の3つのポイントを含めた社内調整に十分な時間をかけ、最初にしっかりと計画を練り上げてから進めることが重要です。

3C分析を活用した効果的な採用戦略

競合分析による採用予算と手法の最適化

競合分析は、どのようなキャリアや年収帯の人材を採用しているのか、またどのような手法で採用を成功させているのかを把握する上で、非常に重要です。そのため、頻繁に名前が挙がる競合他社の情報は、常に収集しておくことが大切です。

<収集すべき情報>
・設定しているペルソナ像
・採用予算
・採用手法
・契約している媒体
・(エージェントを利用している場合)エージェント手数料
・採用状況

これらの競合他社の情報は、自社の採用予算を決定する際にも非常に有効です。そのため、採用活動の初期段階から、しっかりと情報収集を行うようにしましょう。

エリア別顧客分析で成功する採用戦略設計

顧客分析を行う場合、採用エリアによって動向は異なります。都市部での採用では、人口の大きな変動がないため、最上流のデータから確認する必要はあまりありません。しかし、地方やエリア限定の採用においては、まず最初に情報を収集し、分析することが大切です。

<収集すべき情報>
・対象エリアの人口
・対象エリアの労働者人口
・採用要件を満たす人材の割合

転職潜在層のデータを集めるには、厚生労働省が公開しているような情報が役立ちます。

健在層については、転職媒体を活用し、セグメント分けやフラグ設定を行って検索条件から確認することができます。この際、1つの媒体だけでは偏ったデータになるため、複数の媒体を調査しながらシミュレーションを設計するようにしましょう。

<確認すべき情報>
・採用要件を満たす人材の割合
・応募割合
・選考進捗率

アクティブ層の動向は、複数の大手転職サイトのデータを組み合わせることで把握できます。また、エージェントなど多くの情報を持つ企業・人材に、情報の正確性や最新のトレンドを確認しながら採用戦略を設計していくことも有効です。

実例紹介

【要望】
地方エリアでエンジニアを20~30名程度採用したい

【調査結果】
・行政が提供するデータを確認したところ、対象となる人材は非常に少ない
・転職サイトやビジネスSNSを見ても、アクティブに転職活動をしている層はわずか数名
・潜在層を含めても、要件を満たす人材は約30名程度

【施策】
・アクティブ層や要件を満たす全ての人材を採用できるわけではないため、現地採用は行わず、リモートワークの導入を提案
・フルリモート勤務の体制を整え、幅広いエリアからエンジニアを採用

「媒体に掲載すれば誰かが応募してくるだろう」と考えがちですが、このように市場に対象人材がいない場合は、どうすることもできません。また、要件を満たす人材がいても、本当に欲しい層はその中の上位層に限られることが多く、上位層には複数の企業からオファーが集中しているため、採用は容易ではありません。

このケースからもわかる通り、しっかりとした戦略設計を行った上で、状況に応じた柔軟な採用を進めることが大切です。

市場分析がもたらす採用の成功

採用活動において、市場調査やトレンドの把握は不可欠です。これを綿密に行わなければ、効果的な採用戦略を設計することは難しくなってしまいます。

STARMINEはさまざまなエージェントとリレーションを構築しているため、通常1~2ヶ月かかるリサーチも、1~2週間で完了することが可能です。もし「現状の業務に追われておいて、採用業務にこれ以上のリソース・工数を割けない」といったお悩みがございましたら、お気軽にお問い合わせください。

この記事を書いたメンバー

大山夏季

NATSUKI OYAMA

大山 夏季

中途採用支援事業部 事業部長

大手航空会社のグランドスタッフを経験したのち、ヤフー株式会社に入社。中途採用・新卒採用・子会社設立・HRBP立ち上げなど、人事領域全般に従事。 その後、株式会社カプコンにて、中途・新卒・グローバル採用などの採用業務を中心とした人材開発業務や人材配置を担当。 2024年にSTARMINEへ参画。
中途採用支援事業部の事業部長を務め、中途採用コンサルティング業務に従事。

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