中途採用プロセスを効率化!フェーズごとの課題の見つけ方と改善策
中途採用には、戦略設計から入社までいくつものフェーズがあり、各フェーズで「歩留まり」が発生します。しかし、「採用プロセス上、ある程度の歩留まりは仕方ない」と考え、課題の本質を見過ごしてしまってはいないでしょうか。 実際に […]
目次
優秀な人材を採用したにもかかわらず、短期離職してしまった。
そんな「採用失敗」の苦い経験はありませんか?実は、時間とコストをかけた採用が水泡に帰す最大の原因は、スキルではなく「カルチャーフィット」の見極め不足にあります。
近年、多くの企業が採用基準の中に「カルチャーフィット」を明確に位置づけるようになりました。その要因の一つとして、採用後のミスマッチが組織に与える影響が年々大きくなっていることが挙げられます。従来のスキルや経験だけでなく、自社の価値観や働き方に合う人材かどうかが活躍・定着に大きく影響することが広く認識され始め、カルチャーフィットは無視できない要素となりつつあります。
この流れを生んでいる背景には、企業と働き手の価値観がこれまで以上に多様化していることがあります。企業側では、MISSION・VISION・VALUEの強化、柔軟な働き方の拡大、副業解禁、リモートワークの普及などが進み、組織のスタイルそのものが変わりつつあります。一方で働き手側も、キャリア観の多様化が進み、フリーランスや副業、短時間勤務など、型にはまらない働き方を選ぶ人が増えています。
こうした変化により、「この企業に合う人・合わない人」が以前より明確に表れやすくなっています。しかしその一方で、「自社のカルチャーに合う人材をうまく見極められない」「入社後にミスマッチが発覚する」といった課題を抱える企業も少なくありません。
そこで今回の記事では、カルチャーフィットを見極める際に押さえておくべきポイントや、実際に使える面接質問例について解説します。

カルチャーフィットを適切に見極めるためには、まず自社のカルチャーを言語化し、明確化することが欠かせません。これは、属人化した判断に頼るのではなく、組織として再現性のある採用基準に落とし込むためです。
「自社が大切にしている価値観は何か」「どんな行動が自社らしさを形づくっているのか」といった要素を具体的に定義し、それを社内に共有・浸透させることが最初のステップとなります。そのうえで、定義したカルチャーを面接でどのように見極めるのか、質問設計へと進んでいきます。
言語化する際には、既存メンバーの活躍事例を分析することが効果的です。成果を上げている社員に共通する行動特性・価値観・仕事の姿勢を抽出することで、自社にフィットする人材像が浮き彫りになります。同時に、組織に馴染めず早期離職につながったミスマッチ事例の分析も重要です。成功と失敗の両面から情報を整理することで、カルチャーの核心をより正確に捉えられるようになります。
しかし、成功・失敗の事例が明確に整理されていない企業も少なくありません。その場合は、まずブレーンストーミングでVALUE、企業として大切にしている思想、社員の間で自然と行われている行動などを幅広く挙げていきます。そこからパターンを整理しながら言語化することで、自社らしいカルチャーの輪郭が見えてきます。
ただし、VALUEを軸にカルチャーを定義する際には注意が必要です。VALUEには「こう在りたい」という理想像が込められているケースが多く、現状のカルチャーと理想の姿が一致していないまま基準を設定してしまうと、判断がぶれる可能性があります。
そのため、まず明確にすべきなのは、「今のリアルなカルチャーにフィットする人材」を採りたいのか、それとも「今後つくっていきたいカルチャーにフィットする人材」を採りたいのかという前提です。この基準をはっきりさせることで、言語化の方向性が定まり、面接での見極めもより一貫したものになります。
このように、どの状態を前提に基準を定義するのかをあらかじめ整理しておくことが、カルチャーフィット設計の出発点として非常に重要です。

カルチャーフィットの度合いは、大きく3つの層に分けて考えることができます。
1. 自社のカルチャーと深く一致している「ど真ん中の人材」
2. 一部にズレはあるものの概ねフィットしている「周辺領域の人材」
3. カルチャーとのギャップが大きい「アンフィット人材」
一般的には、1つ目のど真ん中に位置する人材を採用することが最も望ましいとされます。しかし、ど真ん中人材だけで組織を固めてしまうと、多様な視点が失われやすく、新しい発想や変革が生まれにくくなるという側面もあります。
そのため、多様性を尊重しながら組織を成長させたい場合には、2つ目の「多少のズレを持ちながらもフィットしている人材」を採用することにも大きな価値があります。こうした人材が加わることで、異なる価値観や経験が組織にもたらされ、互いに刺激を受けながら多様な気づきや学びが生まれやすくなります。
このように、「アンフィット人材を避けながら、ど真ん中人材と周辺領域人材をバランス良く採用する」という考え方も組織づくりにおける有効な手法の一つであり、これまでになかったタイプの人材を迎え入れることが組織の成長や変革を後押しするケースも多く見られます。
多様性を踏まえたこうした考え方を前提にすると、フィット度合いの捉え方を「実際の成功・失敗」とどう結びつけるかも重要な視点になります。実際、早期離職などのミスマッチが起きたケースはアンフィット人材に該当しますが、成功事例については、単純に「ど真ん中人材」と断定できるとは限りません。なぜなら、現状のフィット像だけを基準にしてしまうと、組織としての成長機会を狭めてしまう可能性があり、カルチャーフィット度合いが成功の決定要因とは言い切れないためです。
【現在のカルチャーにフィットする人材特性】
温かい人柄ではあるが、遠慮がちで意見をはっきり言わない人が多い
【現状から想定されるフィット人材】
物腰が柔らかく、温かいタイプの人
【起こりうる問題】
判断に疑問があっても反対意見を言う人が少なく、議論が深まらない
【検討すべきポイント】
「ハートフルさ」を持ちつつ、必要な場面では意見を伝えられる人材の方が、組織として望ましいのではないか?
すでにVALUEが浸透し、理想像に近い文化を体現できている企業であれば、現状フィットしている社員像を参考に言語化できます。一方で、まだ変革途中の企業の場合は、ど真ん中ではなく、新しい風をもたらす周辺領域の人材を基準に置く必要があります。

周辺領域の人材が入社した際は、その言動や価値観を組織が適切に評価し、企業にとってプラスの刺激として受け止められるように働きかけることが重要です。そうすることで、新しい風を取り入れながら価値観の幅を広げていくことができます。
こうした人材の見極めを面接で再現性高く判断するためには、質問設計や評価シートに落とし込むことが重要です。具体的には、次の2つの手順で基準を整理していきます。
①しっかりフィットする人材の基準と言動と採用しない基準(ノックアウト・ファクター)を言語化する
②可能性がある人材(上述のど真ん中・周辺領域)の基準と特徴をそれぞれ言語化する
この順番で整理することで、採用現場で基準がぶれにくくなり、評価の一貫性が高まります。
多くの企業では、フィットする要件ばかりを設計しがちです。ノックアウト・ファクターを明確にしている企業は意外と多くありません。
特に、多様性を歓迎する企業ほどこの設計が抜けやすく、判断基準が曖昧になってしまう傾向があります。しかし、この「不採用基準の言語化」こそが、カルチャーフィットを精度高く捉えるために非常に有効なのです。
【NG要素】
冷徹なタイプの人
【会話中に投げかける文】
時に人は、自分の成果を出すことで精一杯で、周りに気を配れない状況になることもありますよね
【NGと判断する反応】
「そうですね」「あります」など、周囲配慮の意識が希薄な回答
【OKと判断する反応】
「そんな状況でも、私は周りの様子が気になってしまうタイプです」など、温かさを感じられる価値観がにじむ回答

面接において候補者を見極めることは、カルチャーに限らずスキルや経験においても簡単ではありません。ストレートに質問して「YES」と答えが返ってきたとしても、それだけで正しい判断を下すことはできません。そこでおすすめしたいのが、想定状況を設定したうえでの質問です。
【狙い】
チャレンジの観点を持っているかどうかを見極める
【質問】
●●をする必要があります。あなたは、まず何から始めますか?
【質問の意図】
どのように取り組むかの方法を知る
【見るポイント】
・進め方(計画型か、まず行動して改善する型かなど)
・実行後の改善やPDCAの回し方
・共有のスピード、失敗の捉え方、自己認識の正確さ
また、過去のエピソードを通じて候補者の考え方や価値観を探る方法も、見極めの質を高めるうえで有効です。成功事例だけでなく失敗経験についても質問することで、人物像をより立体的に把握できます。その際に確認したいのは、「経験から何を学び、それを再現性のある行動として活かせているか」です。自己分析ができている人ほど、行動の一貫性や再現性も高い傾向があります。
さらに、面接評価シートに「自社らしさへのフィット度」を評価する項目を設け、5段階評価とその理由・所感を記録していくことも効果的です。蓄積されたデータを分析すれば、自社のVALUEや価値観において重要なキーワードを抽出でき、面接基準の精度向上にもつながります。加えて、事前にカルチャーを言語化したうえで、面接官トレーニングや評価基準の統一、マニュアル化といった準備を整えておくことも、おすすめです。

そもそも、企業に明確なカルチャーがなければ、給与などの報酬以外で人材を繋ぎとめる理由が乏しくなってしまいます。また、たとえプロジェクトが成功したり事業部・組織が成長したとしても、その成果が属人的になりやすく、チームとしての継続的な成長は実現しにくくなります。
さらに、カルチャーフィットしていない人材の場合、定着率の低下や早期離職リスクの上昇といった損害が生じ、結果としてその人材を採用するために費やした時間・労力・コストが無駄になる可能性があります。一方で、カルチャーフィットしている人材は、事業部での生産性を高め、パフォーマンスの最大化につながります。加えて、周囲にも良い影響を及ぼし、社内全体のエンゲージメント向上にもつながります。また、大きな衝突を最小限に抑え、心理的安全性を高めることも可能です。
このように、カルチャーフィット人材は企業に多くの効果をもたらします。そのため、自社のカルチャーを言語化・明確化し、適切に見極められる体制を構築していくことが非常に重要です。
RELATION
中途採用には、戦略設計から入社までいくつものフェーズがあり、各フェーズで「歩留まり」が発生します。しかし、「採用プロセス上、ある程度の歩留まりは仕方ない」と考え、課題の本質を見過ごしてしまってはいないでしょうか。 実際に […]
採用広報の重要性を認識しながらも、なかなか着手できていない企業は少なくありません。その背景には、リソース不足や、何から始めればよいか分からないといったノウハウ不足など、さまざまな要因があります。 しかし、こうした課題があ […]
人材を新たに採用しようとしても、なかなか応募が集まらず、採用に結び付かないというケースは少なくありません。その原因の一つとして、「求人票そのものに問題がある」という可能性が考えられます。 求人票は、単に募集要件や企業情報 […]