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求人票が変われば、採用は変わる。「魅力的な求人票」の本質と作り方

大山夏季

大山 夏季

中途採用支援事業部 事業部長 / シニアコンサルタント

目次

人材を新たに採用しようとしても、なかなか応募が集まらず、採用に結び付かないというケースは少なくありません。その原因の一つとして、「求人票そのものに問題がある」という可能性が考えられます。

求人票は、単に募集要件や企業情報を記載すれば良いものではありません。多くの求人情報があふれる中で、求職者にとって魅力的だと感じられる内容でなければ、応募を集めることはできません。では、求職者に響く「魅力的な求人票」とは、どのようなものなのでしょうか。

今回は、求人票の基本的な考え方や、作成時に押さえておきたいポイントについて解説いたします。

ただの募集要項ではない。求人票の本来の役割とは

求人票は、求職者が「この会社に興味を持てるか」「自分がやりたいと思える仕事やポジションがあるか」「理想とする働き方や年収が実現できそうか」といった情報を確認するための、重要な資料です。そのため、求人票を作成する際は、「求職者が会社に興味を持つ内容になっているかどうか」をしっかりと意識する必要があります。

日本の企業の99.7%は中小企業であり、求職者にとっては聞いたことのない会社であるケースがほとんどです。そのため、まずは求人票を見て興味を持ってもらう。そこから企業サイトを訪れて詳しく知ってもらう、という流れが一般的になります。つまり、企業の知名度やブランド力が応募の出発点とは限らないのです。

自社のことをこのような形で知ってもらう流れが多いからこそ、高いスキルや経験を求める内容ばかりを強調してしまうと、求職者に「自分には無理かもしれない」と感じさせてしまい、会社に対する関心すら持ってもらえない恐れがあります。

だからこそ求人票には、ポジションや業務内容を具体的に記載することはもちろん、それに加えて「この会社で働いてみたい」と思ってもらえるような形で情報を記載することが大切になります。

伝えるべきは、企業としての存在意義と働く価値

求人票を作成する企業の中には、自社をより魅力的に見せたいという思いから、実際よりも情報を誇張して記載してしまう企業が一定数存在します。しかし、本当に大切なのは、自社の取り組みや仕事の魅力を、誠実かつ心に響く表現で伝えることです。

つまり、良く見せることを目的とするのではなく、その会社で働く意義や価値、そして企業としての存在意義を、魅力的に伝えられる表現にすることが求められます。

そのためには、単に業務内容や職務の目的を並べるのではなく、会社のパーパスやビジョンといった抽象度の高い要素から伝え、仕事の意義ややりがいが自然と伝わるような構成・表現を意識することが重要です。そうでなければ、求職者の関心を引きつけることは難しく、企業サイトなどにさらに情報を探しに行こうという気持ちにもなってもらえません。

だからこそ、「この仕事にはこれだけのやりがいがある」と感じてもらえるような求人票を作成できるかどうかが、応募を促すカギを握っているのです。

パーパスやビジョンを記載する際には、企業としての存在意義を的確に捉えられているかどうかが重要なポイントとなります。その第一歩として、まずは経営の視点から自社の組織や方向性を正しく認識し、それを言語化することが求められます。

例:「教会をつくるためにレンガを積む」求人票の場合

【タイトル】
地域の平和と憩いを生み出すお仕事

【求人の書き出し】
私たち株式会社〇〇が取り組んでいることは、第二の家と思ってもらえるような教会を作ることで、地域の平和と憩いを生み出す事業に取り組んでいます。単なるレンガを積むお仕事ではなく、地域の人々のお役に立てるやりがいのあるお仕事です。

欠かせない2つのポイント

実際に求人票を作成する際に注意すべきポイントは、主に以下の2つです。

① 「4P」を意識した情報設計

求人票に盛り込むべき基本要素として、まずは「4P」があります。これは、

・Philosophy:企業の存在意義や目指す方向性
・People:どのような人が活躍しているか、どのような人物を求めているか
・Profession:担当する仕事内容や期待されるキャリアパス
・Privilege:報酬、福利厚生、働く環境など

の4つの観点から情報を整理することを指します。

Philosophyはどの職種でも共通する要素ですが、People・Profession・Privilegeは職種やポジションによって異なるため、求人ごとに最適な内容を検討する必要があります。そして、求職者が業務の全体像を把握できるよう、各項目をより具体的に記載することが重要です。

情報の補完と動線設計

求人票だけでは伝えきれない情報も多くあります。そこで、企業サイトや採用ページ、動画コンテンツなど、より詳しい情報にアクセスできるURLを求人票内に記載するなど、求職者が自発的に次のアクションへ進めるような導線を設計することも大切です。情報の受け手とコミュニケーションが生まれるような工夫が、応募意欲の喚起につながります。

「自社にとっての正解」を見極める

近年、転職エージェントがSNSで「こんな求人票には注意」といった内容の画像や動画を発信するケースが増えています。こうした情報は非常に興味深く、転職市場のリアルな声やトレンドを知るうえでは有益な面もあります。しかし、すべてを鵜呑みにするのではなく、自社の状況や採用方針に照らし合わせて取捨選択することが大切です。

参考にできるケース

転職エージェントは、求職者とのコミュニケーションにおいて豊富な経験と専門的な知見を持っています。どのような表現やアプローチが求職者の関心を引きやすいのか、あるいは応募につながりやすいのかといった点において、彼らの発信内容は非常に参考になります。とくに、母集団形成のフェーズでは有効なヒントが得られることも多いでしょう。

注意が必要なケース

一方で、エージェントの担当者は、自社で働いたことは当然ないため、経営方針や組織の文化を踏まえた「本当に欲しい人材像」とマッチしているかまでは把握しきれません。その結果、表面的な訴求で応募者が増えたとしても、入社後にミスマッチが起きてしまうリスクもあります。

だからこそ、人事担当者自身が「自社にとって必要な人材はどんな人物なのか」「どのような価値観を持つ人と働きたいのか」といった視点で情報を整理し、経営層との目線合わせをしながら求人票を構築していくことが不可欠です。人事担当者は社長や経営陣との距離が近いからこそ、社内のリアルな情報を把握できる立場にあります。その強みを活かし、外部情報に左右されすぎることなく、自社らしい求人票をつくることが、結果として良い採用につながっていきます。

Purposeから求人票まで、一貫した支援が可能

STARMINEでは、「どのようにすれば、この仕事や会社の取り組みが魅力的に映るのか」といった視点を大切にしながら、業務の定義づけや伝え方の工夫を通じて、求職者に響く求人票づくりをサポートしています。

求人票づくりに伴走する際には、単に情報を並べるだけではなく、仕事の意義や働く人の想い、企業文化などを丁寧にすくい上げ、それらを言葉にしていくことを大切にしています。

また、ご希望があれば、企業としてのPurposeやビジョンの言語化からご一緒させていただいております。経営層の考えや事業の方向性を丁寧にヒアリングし、それをもとに自社らしさが伝わるメッセージへと落とし込むことで、採用活動全体の軸を整えるお手伝いもしています。

「自社らしさを伝える求人票をつくりたい」「採用の軸を見直したい」といったご相談がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いたメンバー

大山夏季

NATSUKI OYAMA

大山 夏季

中途採用支援事業部 事業部長 / シニアコンサルタント

大手航空会社のグランドスタッフを経験したのち、ヤフー株式会社に入社。中途採用・新卒採用・子会社設立・HRBP立ち上げなど、人事領域全般に従事。 その後、株式会社カプコンにて、中途・新卒・グローバル採用などの採用業務を中心とした人材開発業務や人材配置を担当。 2024年にSTARMINEへ参画。
中途採用支援事業部の事業部長を務め、中途採用コンサルティング業務に従事。

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